湯島サロン「新しい経済を目指した生き方を実践して」
株式会社コンセプトワークショップ 代表の佐藤修さんが主催されている「湯島サロン」で話題提供者としてお話しさせていただきました。
10代から80代の方まで、さまざまな世代の方が集まって下さりました。
私は論理的な考えに基づいて行動するというよりも、身体感覚と対話して進む道を決めているという感じがあって、自分のことを説明するのにはいつも苦労するのですが、こうやってお話しさせていただく機会があると色々と気づきがあります。
10代の頃の競争的な生き方からの転換、大学で経済学を学んで感じたこと、無人島での出会いと体験、ビヨンド自然塾での活動、そして今漠然と思い描いている未来のコミュニティについて、私の生き方は一見するとブレブレのようですがどこかに通底している部分があって、それは私の中心の感覚から生まれているものなんだと思います。
最近はそういうこともわかってきて少し自己信頼につながってきているのですが、今回のサロンでもその部分が伝わったのか、「このまま自分の感覚を信じで進んでほしい」というメッセージを参加者の方々から受け取り、嬉しかったです。
湯島サロンは、幅広い年代の人たちが集まって対等に率直に意見を言える場所というのがいいなと思いました。とはいえ社会生活の中で染み付いたものがあるので、完全に対等であるということは意識しようとしても難しい部分があり、「なぜ年長者は年下世代についアドバイスしてしまうのか」という論点も出てきました。
今までは年齢による上下関係が当たり前のように受け入れられてきたけれど、社会が急速に変わっていくような時代では年代にかかわらずみんながそれぞれに学び合うような風潮になっていくのかもしれないなと思いました。
主催者の佐藤さんが、今回のサロンの内容をまとめて下さりました。
■湯島サロン「新しい経済を目指した生き方を実践して」報告
就活を前に大学を休学して、山梨県の北杜市に移住、そこで自然農に取り組んでいる阪口晴香さんのサロンには15人を超すだけでなく、10代から80代まで、さまざまな世代のさまざまな立場の人が集まりました。
最初に、阪口さんの北杜市での暮らしを紹介した動画をみんなで見てもらい、そこからサロンに入りました。https://m.youtube.com/watch?v=CtApaaLyDTY…
阪口さんは、子どもの頃からピアノ教育や学校教育で、いわゆる「競争社会」的ななかで育ち、その結果、大学も東大に入学、社会を動かしている企業に関心を持ったのか、金融経済や企業経営をテーマに選んだそうです。立ち止まるきっかけになったのは、大学のゼミで「企業価値」に関する論文をまとめた時だったようです。阪口さんは、働く人の視点で企業価値を考えたようですが、それは投資家が出資したくなる会社とは違うことを指摘されたそうです。たしかに経営(学)における「企業価値」とは、その会社がどのくらい「お金を稼ぐ力があるか」で評価されますので、社会にとっての存在価値やそこで働く人にとっての価値などは実際には一致しません。いまの経済(学)では、お金で表現される数値(市場価値)だけが価値なのです。そこに阪口さんは違和感を持ったようですが、さらに実際に自分が就活を始めるとその違和感は自分の問題としてますます大きくなっていったようです。
ところで、阪口さんは大学2年の時に、あるNPOが企画した無人島プロジェクトに参加したそうですが、そこでの体験が、その違和感を抑えることなく、別の生き方への道を開いてくれたのかもしれません。その意味でも、人生には寄り道が大切です。若者を学校という閉鎖空間に閉じこめるような社会では、本当の学びは期待できないでしょう。そこでできるのは「訓練」だけかもしれません。そんな時に、阪口さんは友人の紹介で、山梨県の北杜市で活動している「ビヨンド自然塾」と出合います。そしてそこでのボランティア活動がきっかけで、大学を休学し、そこに移住し、自然の生活に取り組むことになったのです。とまあ、そんな経緯を話してくれた後、北杜市で暮らした1年半の生活ぶりやその結果意識がどう変わってきたか、そしてこれからどうしようと考えているかなどを話してくれました。
大学の同級生の川端さんによれば、阪口さんは北杜市に移住してから、どんどん笑顔が増えてきたそうです。ちなみに彼もまた同じように休学して新しい経済を模索した生き方を実践しています。阪口さんの話の後、参加者からの質問や話し合いが行われましたが、さまざまな人が参加していたので、その話し合いもまたいろんなことを示唆する内容で、とても興味深いものがありました。
たとえば、苦労して東大に入ったのに休学して農業という選択に両親の反応はどうだったかとか、これからの経済にとって大切なのは何かとか、阪口さんのように生き方を変えることができるのは「強さ」が必要なのではないか、とか、暮らしの不便さはないのか、とか…。みんなそれぞれ自分の問題に重ねながらの問いかけだったので、問いも答えもとても興味深かったです。
話し合いが終わった後、参加者みんなに「阪口さんの話を聴いて自分の生き方の何かを変えようと思ったことはありますか」という問いかけで一言ずつ発言してもらうつもりだったのですが、いつものように話し合いが長引いてしまい、この問いかけをする時間がなくなってしまいました。
でも阪口さんの話に触れて、自分の生き方や言動を少し問い直した人がいたことは間違いなく、その後の個別の雑談などや個別に頂いたメールでそれを少し感じました。
しかし若い世代の人が、阪口さんのように自力で、寄り道したり別の生き方に取り組んだりすることは簡単ではありません。やりたいことが見当たらない場合、どうしたらいいのか。そんな質問に、阪口さんは、まずは一度、北杜市に来てビヨンド自然塾のようなところで体験をするのもいいのではないかと呼びかけました。新しい体験をする最初の一歩を踏み出すのは、実際には簡単ではありません。でももし、「袋小路」に迷い込んでいる人がいたら、一度、阪口さんのところやビヨンド自然塾に遊びに行ったら、道が開けるかもしれません。たぶん年齢は問わないでしょう。
ちなみに阪口さんは、また東大に復学するかもしれませんが、しばらくは北杜市に住み続けるそうです。きっとそこで新しい経済のヒントを得て、それに向けての実践に取り組んでいくでしょう。実際にすでに阪口さんは半農半Xに向けて新しい活動にも着手しているようですし、ゆるやかな開かれたネットワークコミュニティ的な社会のビジョンもまだぼんやりとですが、見えてきているように思いました。
新しい経済はこういう風に、知識や論理からではなく実践から生まれるのでしょう。また、大きな変化の時代には、若者から学ぶことが多いことも改めて気づかされました。最近よく言われるように、いかにアンラーニングするかが大事です。でもそれがいかに難しいかも、参加者の話を聴いていて、気づかされました。若い世代から学ぶことができるかどうか、私も反省しなければいけません。
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