荒野を開拓して、野菜が勝手に生えてくる場所を作りたい

野草やたけのこや桑の実は勝手に生えてくるのに、どうして野菜や果物は人間が世話をしないと生えてこないんだろう。

私が「農」に興味を持ち始めたのは、こんな疑問からです。

慣行農法と呼ばれる一般的な農法では、毎年新しい種を買い、農薬や肥料を大量に投下して、大型の機械を何種類も使って作物を栽培しています。そのための設備投資や人件費もかなりかかっているといいます。

規格に合うものしか流通しないので、スーパーに並んでいる野菜は、形も大きさもほとんど同じ。虫食いもほとんどありません。

それってなんだかとても不自然な気がしてしまいます。

単一の作物を等間隔に植え、害虫が出る前に農薬を撒き、作物が大きくなる前に水や肥料をたっぷり与える。そうやって何でもかんでもしてあげるのが慣行農法だとしたら、私が知りたいのは、極力何にもしてあげなかったらどうなるかということです。

何にもしなかったら失敗する確率は上がるかもしれませんが、人間の仕事は減って、失敗した時のリスクも減ります。

労力とお金の投下量と、収穫の出来がある程度トレードオフの関係にあるとすれば、自分にとって最適なバランスを知ることが、農的暮らしの第一歩なんじゃないかと考えました。

それに、そのトレードオフの関係も、上手くやれば覆るかもしれません。

野菜も生物なので、自分自身で生きる力を持っていると思います。

害虫が増えて作物の葉を食ってしまっても、生態系の複雑で多様な関係が均衡を保ってくれて、自然と前よりもいいバランスに落ち着くかもしれません。

水をやらなくても、植物自身が深く根を張って、自分で水を集めて育つかもしれません。

肥料をやらなくても、無数にいる土壌の微生物や小さな虫たちと共生して、自分の力で栄養を集めてくれるかもしれません。

種を買わなくても、野菜が自分で種を作って子孫を残してくれるかもしれません。

自然の力を信じてそれを最大限発揮させつつ、食べられる作物が育つような環境を作ることができたら、人間がコントロールするよりも調和が取れて豊かな畑になる可能性もあると思います。

私がこれからやろうとしている農法は、名付けて、「believe農法」です。

①ススキを倒す

私がmy畑用に借りた庭の一角は、数年間ほとんど手入れをしていなかったので、草原の最終形態と言われるススキの園になっていました。

ススキには申し訳ないところですが、ススキは煮ても焼いても食えないので、人間としては他の食べられる植物に生えてもらった方がありがたいです。

本当は野菜が自力でススキの圧倒的優勢を崩してくれれば楽なのですが、種子から芽を出した野菜が強靭な力でススキを倒すという未来は全く見えませんでした。
なので、種を蒔く前にススキを倒すことにしました。

ススキ一本を倒すのにも結構重労働です。
根っこが木の枝のように太くて、固い土に深く根を張っています。
大鎌とツルハシでひたすらススキと格闘しました。

③耕さない

土壌の中には、目に見えるものから見えないものまで、無数の多種多様な生物が存在しています。

自分の手で鍬を一回入れただけでも、たくさんの虫が慌てて動き回っているのがわかります。

最近の研究では、土壌の目に見えない微生物や細菌、虫たちと植物がどのように共生関係を結んでいるのか、詳細に明らかになってきているようです。

話がそれますが、植物同士が化学物質を出してコミュニケーションをとっている可能性も指摘されているみたいです。まさに生命の神秘ですね。

慣行農法では、毎年畑を耕して農薬を撒くことで、土壌の生物を殺し、土壌環境をリセットしています。

畑を耕す栽培方法は、土壌を毎年同じ状態にすることで管理がしやすくなるというメリットがありますが、一方で、土壌の豊かな生態系を破壊し、長期的にゆっくりと土壌の劣化を招くというデメリットがあります。

耕さない栽培方法では、むしろ年々土壌が改善されていくといわれています。デメリットとしては、耕起栽培に比べると収量が落ちるようです。
土壌生物のはたらきによって、年々収量も品質も上がっていくみたいですが、、。
(参考: https://yuki-hajimeru.net/?p=1092 )

ただ、毎年畑全面を耕す手間と収量の低下を天秤にかけると、どちらが得かはわからないですね。

私は、長期的にみたときに土地に負担がかからないようなやり方が循環的でいいなと思うので、不耕起でやってみようと思いました。

②堆肥は入れない

ススキが繁茂している土壌は肥沃度があまり高くないので、堆肥を入れたりくらつきという作業をして土を育ててから植えるようにと教科書に書いてあったのですが、とりあえずこの作業は省略することにしました。

堆肥を入れずに種を蒔いたらどうなるのか知るためです。初めからうまくいく方法を試しても面白くないので、もしうまくいかなかったら、来年以降は工夫してみようかなと思います。

④水をやったりやらなかったり

水やりのホースが頑張れば届く場所にあったのですが、正直毎日ホースを引っ張って水やりするのは面倒くさい…!できるものならしたくない!

そこで、発芽するまでの水やりが特に重要だと言われている、人参を対象に実験することにしました。

同じ区画で、半分はほぼ毎日水やりをして、半分は全く水をやらないという風にしました。

どんなに土がカラカラに乾いていても、強い意志を持って、水をあげないようにしました。

左から、蕪、人参、人参

人参は、水をやってもやらなくても発芽率はほぼ変わらないという結果に!
他の作物には全く水をあげていないのですが、ほぼ全部の種が無事発芽しました。
来年からは水やりしなくてもいい!!わーい!!

いい感じに芽が出てます。一つの区画に、こんなにたくさんの野菜があるなんて、テンション上がりますね。

野菜だけじゃなくて雑草も一緒に芽を出しています。虫もたくさんいて、土はふかふかです。ミニチュアの森みたい!

⑤草を刈る

その土地に適した植物が強くなって、他の植物を凌駕して生育権を握って行くのが自然の摂理です。

それに反して、雑草はあまり生えないで、野菜はたくさん生えて欲しいというのは人間のわがままなのです。そんなわがままをやろうとしているのだから、それなりには手を加えないといけないのだろうなと思います。

雑草と呼ばれる植物には申し訳ないですが、野菜の近くに生えているものについては見つけ次第刈っています。

他のことで忙しくて手が回っていない部分もありますが、、

そういうところは、ちゃっかり特大のよもぎやススキが畑を覆っています。
ススキとヨモギ、強すぎる…!
ヨモギは今度、ヨモギパンにでもして食べようかな。

野菜が優勢になるまでは、草刈りは省けなさそうですね。

⑥間引いたり間引かなかったり

間引きも、水やりと一緒でできるだけやりたくない作業なので、対照実験してみることにしました。

蕪と人参を対象に、間引きした列と間引きしない列を作って実験してみたのですが、なんと、蕪の方は間引きした列が全死するという悲しい結果に…!

隣り合っている仲間同士で協力し合って保水したり養分を集めたり、他の作物の侵略を防いだりしていたのが、間引くことで上手くいかなくなって死んでしまったのかなと思います。難しいですね、、。

人参は、間引いた方も元気なので、これからどうなるのか楽しみです。

↑去年猪に食われたジャガイモの生き残りを移植したら、ジャガイモがなりました!

ワイルドストロベリー?
甘酸っぱくて美味しいです。お隣にはネギがいます。

通路になんとなく植えてみた蕪が1番生育がいいです。踏まないように気をつけて歩いてます。

全く植えた覚えのないトマトが勝手に生えてきました!なぜ??

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以上、畑開拓のレポートでした!
いま育っている作物が無事収穫できるようになったら、またnoteに書こうかなと思います。
なんだか思ったより長くなってしまいましたが、ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございます…!